混沌を征く理あるいは匣の中の猫または人知叶わぬ者の振るうダイスの目
190━━神は賽を振らない━━
Albert Einstein
14 March 1879 – 18 April 1955
━━━━宇宙の全ての出来事や運命は単なる偶然ではなく、秩序や法則によって支配されている━━━━
故に神は賽を振らない
能見ショウコの宿す神秘
彼女自身や周囲の人間は知識の神秘と認識している。
だが、それは誤りであり
その本質は“観測”と“定義”であり、副次的なものに過ぎない。
例え噺をしよう
目の前に一機の航空旅客機がある
この飛行機が無事目的地に到着するかあるいは墜落するか
飛行機の性能 燃費 天候、気温、気圧、湿度といった空気の粘性 パイロットの技量、体調、常に模範的に規律を遵守し、過失或いは故意に逸脱する精神的傾向は無かったか 機体の重量、重心、経年数、積んだ燃料、整備状況
それらに影響を与える航空会社の性質や財務状況、周囲の人間
仔細を挙げればキリは無い
極端かつ前提を崩してしまうが、目的地を変えてしまうかも知れない
仮にこれらを検証、可能性を検討すれば高精度での“予測”は可能となるだろう。
━━━人はサイコロに祈る━━━
しかし、完全は有り得ない。
我々が人間である以上、何処かに誤りが、主観が、既成観念が、固定観念が入る
わずかな狂いは式の歪みとなり、望んだ解(こたえ)は破綻する。
故に
人はサイコロに祈る
━━━━神は賽を振らない
人はサイコロに祈る━━━━
能見ショウコの本質は真偽真贋を誤らない見識なのだ
対象を正しく認識し
持つ情報を観測し
世界に与え得る影響を定義し
否定要素を排除し
有り得る未来を推論し
比較検討を繰り返し
望まぬ未来を排却し
あらゆる計算の果てに
イカサマ博徒が巧みにサイコロの目を操るように
それが存在しうる未来ならば手繰り寄せる事すら可能となる
━━━━━神は賽を振らない
人はサイコロに祈る
ラプラスの悪魔は賽子と嗤う━━━━